Kの投資日記

日々ローリスクハイリターンな投資手法を研究している会社員です。最近は仮想通貨のアービトラージ。

コインチェックはNEM (XEM)流出事件の被害者に被害総額460億円を返金できるのか【Excelで検証】

インチェックから580億円もの NEM (XEM)が流出してから、

はや2週間が過ぎようとしています。

 

日経新聞によれば、コインチェックは28日未明に全保有者に日本円で返金すると発表しています。

返金額は日本でもっともXEMの取引高の多いZaifの価格を参考に算出しているそうです。

返金総額は流出総額より120億円少ない460億円です。

 

 

マウント・ゴックス元CEOのマルク・カルプレスがコメントするとおり、

返金が長引くほどXEM保有者からの訴訟リスクは高まるというのは当然です。

 

 

 「ひょっとしたら、返金に充てる原資がないのではないか」

という意見は懐疑的で、

販売所ビジネスによりキャッシュは潤沢というのが大勢を占めているとみています。

 

事件発生直後には下記のようなTweetも見受けられました。

 

 

 とはいえ、現実として返済時期に関するアナウンスはされておりません。

インチェックから発表されたプレスリリースの一部を抜粋します。

 

 

 

1月26日に不正送金されたNEMの補償について

総額 : 5億2300万XEM
保有者数 : 約26万人
補償方法 : NEM保有者全員に、日本円でコインチェックウォレットに返金いたします。
算出方法 : NEMの取扱高が国内外含め最も多いテックビューロ株式会社の運営する仮想通貨取引所ZaifXEM/JPY (NEM/JPY)を参考にし、出来高の加重平均を使って価格を算出いたします。算出期間は、CoincheckにおけるNEMの売買停止時から本リリース時までの加重平均の価格で、JPYにて返金いたします。
算出期間  : 売買停止時(2018/01/26 12:09 日本時間)〜本リリース配信時(2018/01/27 23:00 日本時間)
補償金額  : 88.549円×保有
補償時期等 : 補償時期や手続きの方法に関しましては、現在検討中です。なお、返金原資については自己資金より実施させていただきます。  

 

出典:コインチェック株式会社

 

そこで私自らコインチェックの手数料収入をExcelのデータテーブルを活用して推定し、

「じっさい返済能力はあるのか」

について検証していきます。

 

 

 

 

1.月間取引高について(前提条件)

CoinMarketCapで、Monthly Volume Rankings (Currency)JPY が公開されております。

(データ取得時から30日間のマーケット全体の取引高は公開されています。)

そこで流出し、コインの総供給枚数が減ったXEMを除く仮想通貨の取引高は一定と仮定し、コインチェックの月間手数料収入を算出していきます。

 

2.コインチェック月間手数料収入の基本算出式

以下、コインチェックの略称をCCとします。

CC手数料収入(D)は下記のとおり求めます。

 

CC取引高(B)×(CC手数料 ÷ CC取引高(E))

 

 (CC手数料 / CC取引高)とは、いわゆる「スプレッド、取引手数料」です。

 

インチェックは、ビットコインでは取引所ビジネスと売買仲介ビジネスの2つを、

アルトコインでは売買仲介ビジネスのみおこなっています。

 

また売買仲介ビジネスにおける取引手数料は、ビットコインアルトコインで大きく異なります。

 

そこで本記事では、ビットコイン(BTC)とアルトコイン(CCが取り扱うビットコインを除く仮想通貨)の2つのケースに分けてCC手数料収入の算出を試みます。

 

3.ビットコイン(BTC)のCC手数料収入の算出

下記のサイトで、コインチェックの BTC/JPYの月次取引高が公開されているので、

ビットコインの月次取引高もベタ打ちでOKでした。

 

出典:Bitcoin日本語情報サイト

 

ビットコインのCC手数料収入は、

CC手数料 ÷ CC取引高(E)を1%とすると

 

CC取引高(B) × CC手数料 ÷ CC取引高(E)

=31,803億円×1%

=318億円

 

と算出できます。

 

 上記のような計算を下記の表ではおこなっています。

※CCはビットコインのみ、取引所ビジネスと売買仲介ビジネスの2つを展開しており、

また手数料のウェイトも都度変わります。

 

※1%としたのは私の肌感覚です。

 

※斜体青字はベタ打ちです。

 

※黒字の値は何らかの計算をしています。

 

f:id:k-aoyama21:20180213121724p:plain

 (表1)

4.アルトコインのCC手数料収入の算出

 続いてアルトコインです。

 

アルトコインのCC手数料収入を算出するにあたり、

XEMの取引シェア率が他のアルトコインの取引シェア率と同じ値であると仮定して算出しています。

 

またXEMを取り扱う全ての取引所のコインの価格は同じであると仮定した場合、

CCが取り扱うXEMのシェア率とCCの市場における取引シェア率は、

イコールとなります。

 

さてXEMの総供給枚数は90億枚

CCから流出したXEMの枚数は5.2億枚です。

 

XEMの総供給枚数のソース

出典:CryptoCompare

 

CCから流出したXEMの枚数のソース

出典:日本経済新聞

 

 

以上から、CCの市場における取引シェア率は5.8%

と求めることが出来ます。

 

CCが取り扱うXEMのシェア率

=XEMのCCでの流出枚数 ÷ 総供給枚数

=5.2億枚 ÷ 90億枚

=CCの市場における取引シェア率

=5.8%

= XEMのCC取引高 ÷ 月間総取引高

 

※本記事では関係ありませんが、

被害総額(JPY)は580億円と公表されているので、

マーケット全体の月間取引高は10,038億円です。

 

 ここで算出されたCCのXEMの市場における取引シェア率を、

他のアルトコインのCCの市場における取引シェア率に適用していきます。

 

これよりビットコインを除くCCが取り扱うアルトコインの月間取引高は、

下記の計算式により算出されます。

 

CCが取り扱うアルトコインの月間取引高(B)

= 月間総取引高(世界, A) × アルトコインのCCの市場における取引シェア率

= 月間総取引高(世界, A) × CC取引高 ÷ 月間総取引高(C)

 

上記のような計算を下の表では行っております。

 

f:id:k-aoyama21:20180213124633p:plain

(表2)

 

以上より、

CC手数料収入合計(BTC込)は1,166億円、
CC手数料収入合計(BTC含まず)は848億円という推定値が算出されました。

 

ただし手数料収入は、

CCの取引シェア率と手数料のウェイトに大きく左右されることは否めません。

 

そこでExcelのデータテーブルを活用して手数料収入をレンジでみてみましょう。 

 

5.CCの取引シェア率と手数料のウェイトを変えて手数料収入をレンジで確認する

データテーブルの使い方は他のブロガーにお任せすることとして、

本記事では結果から考察していきたいと思います。

 

データテーブルですが、

返金総額の460億円を下回る値は赤字、

460億円の2倍の920億円を上回る値は緑字

としています。

 

(1)BTCの手数料収入を含めた場合のデータテーブルをみてましょう。

※単位:億円


CC取引高 ÷ 月間総取引高(アルトコインにおけるCCの取引シェア率):2%以上

CC手数料 ÷CC取引高(アルトコインの売買手数料):4.5%以上

であれば、

月間手数料収入は返済総額の460億円を上回りますね。

 

デフォルトで設定したケースはデータテーブル上では好条件となるかもしれません。

 

f:id:k-aoyama21:20180212225015p:plain

(表3) 

 

(2)続いてアルトコインのみの手数料収入のデータテーブルです。

※単位:億円

CC取引高 ÷ 月間総取引高(アルトコインにおけるCCの取引シェア率):5%以上

CC手数料 ÷ CC取引高(アルトコインの売買手数料):5%以上

であれば、

月間手数料収入は返済総額の460億円を上回りますね。

 

デフォルトで設定したケースはデータテーブル上では可もなく不可といった条件ではないでしょうか。

 

アルトコインにおけるCCの取引シェア率が2%以下である場合、

あるいはアルトコインの売買手数料が1.5%以下である場合は

460億円を下回るとみてよさそうです。

 

f:id:k-aoyama21:20180212225026p:plain

 (表4)

6.2017年1月~12月の当期純利益累計もシミュレーションしてみた

 

 

2017年1月~12月の当期純利益累計のデータテーブルも作成しました。

 

ただしアルトコインにおけるCCの取引シェア率を5%と仮定しています。

 

データテーブルの変数は当期純利益率とアルトコインの売買手数料の2つです。

 

2017年1月~12月の当期純利益累計ということで、さいしょに年間の手数料収入を推定します。

BTCの月次取引高については、冒頭でとりあげたとおり、データが取得できます。

 

また12月度はアルトコインの手数料収入も推定できていることから、

インチェックの手数料収入のBTCとアルトコインの内訳は、

毎月一定と仮定することで求めます。

 

当期純利益率を変数とするので、手数料収入と当期純利益の年間推移を

下記の表にまとめました。

f:id:k-aoyama21:20180213222041p:plain

 (表5) 

 

※ *1上部の表の「手数料収入」と下部の表の「BTC」は同義です。

 

※ 下部の表の12月度のアルトコインの手数料収入(848億円)は、表2の

CC手数料収入合計(BTC含まず, アルトコインの手数料収入)から引っ張っています。

 

※1月~11月の手数料収入合計とアルトコインの手数料収入は下部の表の「12月内訳」の値と12月度のアルトコインの手数料収入(848億円)から求めています。

 

例)11月度のアルトコインの手数料収入の場合

(11月度のビットコインの手数料収入:227億円)×73%÷27%

=604億円

 

 

 

当期純利益累計の値が算出できたのでデータテーブルを作成しました。

 

ここでも既出のデータテーブルと同様に、

返金総額の460億円を下回る値は赤字、

460億円の2倍の920億円を上回る値は緑字

としています。

 

≪参考≫当期純利益率の目安について

デロイトの『ネット証券会社の業務と財務諸表の特徴』によれば、

 

売上高総利益率(当期純利益/営業収益)は、インターネット専業の証券会社が27.90%であるのに対して、全国証券会社平均は17.44%

出典:Deloitte

 

と記載されています。

 

インチェックは仮想通貨を取り扱っていることからエンジニアの高い技術力を求めざるを得ないため、ネット証券より人件費が高くつくと考えれば、当期純利益率は低いとみるのがベタです。

 

少なくともネット証券の27.9%がコインチェックの当期純利益率の天井ではないでしょうか。

 

そこでデータテーブルの当期純利益率のレンジは2.5%から2.5%間隔で25%までとしました。

 

(1)まず当期純利益累計シミュレーション(BTC込, 億円, 2017年1月~12月)のデータテーブルです。

※単位:億円

f:id:k-aoyama21:20180213222151p:plain


当期純利益率:15%以上

CC手数料 ÷CC取引高(アルトコインの売買手数料):5%以上

であれば、

月間手数料収入は返済総額の460億円を上回ります。

 

 

(2)次にcoincheck 税引前利益累計シミュレーション(BTC含まず, 億円, 2017年1月~12月)のデータテーブルです。

※単位:億円

f:id:k-aoyama21:20180213222222p:plain

 

当期純利益率:20%以上

CC手数料 ÷CC取引高(アルトコインの売買手数料):6%以上

であれば、

月間手数料収入は返済総額の460億円を上回ります。

 

またビットコインの手数料収入を含めないと460億円の2倍の920億円に到達するケースはないということも分かりました。

 

7.いろいろ数字をこねくり回してみえた結論(答えだけ知りたい人はこちらへ)

返金は全額キャッシュかどうかは別として可能とみました。

 

インチェックの売買手数料とアルトコインの取引シェア率は、返済総額の460億円を上回る手数料収入を確保するために必要な値以上であると判断できたためです。

 

ただし、今後もコインチェックが存続できるかどうかは別問題です。

なぜなら、高騰するエンジニアを確保しないかぎり、事件の本質的な原因であるセキュリティの甘さは変わらず、ユーザーが戻ることはありえないからです。

 

 

≪おまけ≫ブロックチェーンエンジニアの人件費相場からコインチェックのセキュリティ強化コストを予測する

 

ブロックチェーンエンジニアの人件費相場を調べるべく、

Indeedで「東京都 ブロックチェーンエンジニア」で検索しました。

 

Indeedbitflyerブロックチェーンエンジニアを募集していました。

年収は600万円~1000万円。

出典:【ブロックチェーンエンジニア】ビットコイン国内市場シェア8割!ブロックチェーン技術で世界を変えるfintech企業でメンバー募集!

 

Indeedで掲載されている案件の年収の加重平均値です。

300万~900万全体の場合:488万円
600万-900万のみ(bitflyerが提示する年収レンジ):684万円

 

年収(X) 案件数(Y) +X*Y
300万円 402件 120,600
400万円 338件 135,200
600万円 275件 165,000
700万円 167件 116,900
900万円 94件 84,600

  

 

仮に同じ年収が提示された場合、エンジニアは事件を起こした会社は選ばないでしょう。

そのためbitflyerが提示する年収レンジで加重平均した年収の684万円よりコインチェックが負担するエンジニアの人件費は多いと私は考えます。

 

以上から、

 

セキュリティ強化コスト

= 新規で採用するエンジニアの年収 × 採用人数

(800万円, 1,000万, 1,200万の3通り) × (30人, 60人, 100人の3通り)

 

から算出することが出来ます。

その計算結果は次のとおりです。

 

  30人 60人 100人
800万円 2億円 5億円 8億円
1000万円 3億円 6億円 10億円
1,200万円 4億円 7億円 12億円

 

よって、インチェックが負担す

セキュリティ強化コストのレンジは2億円~12億円

と推定できました。

 

 

P.S. コインチェックが儲けすぎているので、Max値10億円超であっても

「あれ?思った以上にコストかからない?」

と思ってしまいました。

 

P.P.S.  私事ですが、今回の記事は非常に骨が折れる作業が多く、疲れました。

もうこんな事件起こさないでね、、、(笑)

 

 

※私が仮想通貨市場とどう向き合うべきか考えた記事もあるのでよろしければどうぞ。

 

k21.hatenablog.com

 

(2018年2月20日追記)

noteに投稿してみました(笑)

よろしければどうぞ。

 

note.mu

 

 

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